はちみつ探検隊 塩野米松さんに会う、の巻。 1万年以上前から人が食べていて、いまも変わらない食べかたで親しんでいるもの、それは、はちみつです。ある日、わたしたちはひと瓶の、花のかおりあふれるはちみつに出会いました。それは作家の塩野米松さんからいただいたものでした。日本の花と蜂がもたらすめぐみをもらう旅。はちみつ探検隊、一歩ずつ進みます。 はちみつ探検隊 塩野米松さんに会う、の巻。 1万年以上前から人が食べていて、いまも変わらない食べかたで親しんでいるもの、それは、はちみつです。ある日、わたしたちはひと瓶の、花のかおりあふれるはちみつに出会いました。それは作家の塩野米松さんからいただいたものでした。日本の花と蜂がもたらすめぐみをもらう旅。はちみつ探検隊、一歩ずつ進みます。
塩野米松さん、1947年、秋田県生まれ。作家。/はちみつ探検隊ほぼ日乗組員3人、S 蜂が好き、O 花が好き、T 酒が好き
第3回 くまの目印。
探検隊S
日本みつばちの藤原誠太さんとは、
そもそもどういったおつきあいなんですか?
塩野
ぼくが最初に会ったのは、
たぶん35歳くらいだったと思うんだけど、
つまりそれはいまから35年前ぐらいのなのよ。

雑誌で「手業に学べ」のシリーズを
連載してたときだったと思う。
そのころ日本みつばちの生態は
はっきりしてなかったんだけど、
彼は日本みつばちの交尾をとらえることに
成功したと言ってた。
話を聞こうと思って会いに行ったら、
あちこち案内してくれて、
「この木のこの上で交尾があって」
なんて、とにかく一所懸命話してくれた。
おもしろいやつだったなぁと思ってね。
それが出会いです。

別の機会だったんだけど、
ぼくは山に
日本みつばちの蜜を採りにいったことがあります。
──これは、話をおもしろくするために
言ってるわけじゃないからね(笑)、
くまがさ、はちみつ好きでしょ? 
くま、ほんとうに大好きなの。
日本みつばちってのは、もちろん野生で、
木のうろに巣を作るんだよね。
それがほしくてくまは、
毎日木に行っては、爪や牙でガリガリやる。
でも蜜は採れない。
彼らはのこぎりも斧も持ってないから。
探検隊T
あ、そうか‥‥。
塩野
山を歩いてって、
「あ、あそこに蜜がある」ということは、
くまが教えてくれるわけ。
探検隊O
爪あとで。
塩野
そう。くまのあとを見て、
人間は蜜のつまった巣をいただく。
くまのぶんも、ちゃんと残しておくんだけどね。

そこからが、また大変。
採ってきた巣から蜜を採るのが
難しいんだよ。
西洋みつばちは巣箱に設置されている枠に
蜜がたまっているから、そこから引き出して
遠心分離器にかければ採れるでしょう? 
あれができないもんで、
巣ごとつぶしたり、絞ったりしてさ。
探検隊S
たしか、吊るした巣から蜜を垂らすように
採ったりするんですよね。
塩野
だから「大吟醸のしずくを一滴一滴」ってくらい
面倒なんだよ。
まるごと巣をしぼるから、
にごり蜜は、花粉やらいろんなものが入ってる。
味もすごく複雑なんだよね。
探検隊T
くまが食べるのと同じはちみつ。
なめてみたいです。
塩野
日本みつばちの巣のハニカム構造は、
西洋みつばちと比べて小さいんだって。
誠太は日本みつばちが住めるような環境を
西洋みつばちと同じように人が作れないか、
あれこれ研究したんだよ。
探検隊S
日本みつばちも、
巣箱で蜜が採れると
巣をこわさなくてすみますね。
塩野
たしか誠太は、日本みつばち用の巣枠を完成させて、
そのおかげでたくさんの蜜が
採れるようになったんじゃないかと思う。
日本みつばちの養蜂をしている人たちが、
ものすごく一所懸命なんだって。
探検隊T
すごいな。
藤原さんに、そのあたりのこと、
じっくり聞いてきます。
日本みつばちだけじゃなく、もちろん
西洋みつばちの単花蜜も
たくさん扱ってらっしゃるようですね。
探検隊O
さっきからちょっと気になってるんですけど‥‥、
これ、巣が入ってるんですか?
塩野
見えた?
これ、別にあなたたちのために
ここに置いてたわけじゃないんだけど、
これは蜂の巣の一部だよ。
探検隊O
ひぃぃ。
塩野
危なくないよ、生きてないから‥‥いや、
これから生まれてくるんだよ。
探検隊S
え? 「生まれてくるんだよ」?
塩野
この中に、子どもが入ってる。
これから、蜂になって出てくるの。
探検隊T
ホントだ! うにうに動いてます。
いまにも飛び立ちそう。
塩野
だから、ふたはしめておかなくっちゃ。
大人になったとたん、刺すからね。
探検隊O
塩野さん‥‥こういうの、
いつも持ち歩いてるんですか?
塩野
蜂の巣だけじゃなくて、ほら、
家の中が見渡すかぎり
まるでごみの山のようになってるでしょ?
見つけると拾っちゃうんだよ。
趣味というより性分なんだけど。
探検隊T
これも、あれも‥‥。
きれいなものばかり。
塩野
採ってきたものは、
フィールドノートにスケッチするなり
貼り付けるなりして記録します。
塩野
子どもの頃から抜けない癖なんだよ。
理科少年だったし、
いまは理科老人だね(笑)。
探検隊S
はちみつも、その流れで。
塩野
あのさ‥‥はちみつ屋さんって、カッコいいじゃん?
探検隊S
すごくカッコいいです。
塩野
子どものときになりたかったものは、
灯台守と、はちみつ屋さんだった。
あこがれてたんだよ、
はちみつ屋さんとして旅をして歩く。
探検隊S
あ、移動養蜂家ですね。
塩野
そう。それか、灯台守。
漂泊か孤独、
どっちかがいいなぁと思ってた。

ぼくは幼いころから趣味がじいさんくさくて、
サボテンの栽培をしたりしてたんだけど、
夢のひとつに「蜂を飼う」ということがあった。

当時は、通信販売で──
もしかしたらいまもあるのかもしれないけど、
岐阜から女王蜂を送ってくれたんだよ。
その広告には、マッチ箱に入って
女王が家に来ると書いてあった。
(※じっさいには、女王だけでは不可能で、
1万匹単位の蜂の家族を用いないと養蜂はできません)
すごくやりたかった。
だけど、ここは冬が寒くて雪が多いし、
どうすればいいかわかんなかったから、あきらめた。
それが、ずーっと頭の中に残っててね。
だから、はちみつ屋さんを見ると、
フラフラとくっついて行く習性が(笑)、
あるのかもしれない。
とにかく、養蜂家はカッコいいから、
会うのたのしみじゃん?
探検隊O
はい、とてもたのしみです。
(塩野米松さんの巻、おわり。
次はあんづえのおじいちゃんい会いにいく。
秋田の古語ってなんだろう)
おしえてBEEKEEPER!
はちみつに「品質」はあるの?
巣から採れる自然のはちみつには、
糖、ビタミン、ポリフェノール、
有機酸、楮、アミノ酸、ミネラル等の栄養が
たくさん含まれています。
しかしこれは基本的に、
非加熱の生はちみつに限ります。
市場に出まわっているはちみつの一部には、
糖度をあげるために熱処理をされ、
本来の健康成分が失われているものもあります。
また、糖分などが添加されているものもあります。
はちみつのラベルにある品質表示だけでは
この判断ができないので、
「生」「純粋はちみつ」とうたっているものや、
信頼できるはちみつ店での購入をおすすめします。
(こたえ:藤原養蜂場 藤原誠太さん)
2017-11-01-WED